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1

「だからイージーカム、イージーゴウなんだよ」

ドア越しに男は俺に語っていた。もう既に聞き飽きる程、同じ単語ばかりを繰り返し言っていた。
聞けば簡単に手に入った物は簡単に出て行くという意味らしく、先日破局した彼女を例に、何度も繰り返していた。
当然、俺はそんな事に興味は無く「そうですね」と手元の小説に目を落としながら曖昧に返事を返していた。

「おっと。もう時間だ」

男はそう言うと、扉の鉄格子越しに見えていた帽子より下が露になった。
ドアノブを触っているのか、こちら側のドアノブがガチャガチャと小刻に揺れている、どうやら鍵を開けているようだ。
鍵が外れる音がして、扉が開いた。目の前には先程まで一方的に話していた男が立っている。
馴染みある紺色の制服に帽子、どう見てもサラリーマンではない。国民の安全と治安を守る警察官だ。そして此処は喫茶店でもなく、ましてや交番でもない。刑務所だ。
俺は善良な国民ではない。当たり前だ。善良な国民はこんな所に三年間も居ない。そう、俺は世間一般からはみだした"犯罪者"なのだ。
犯罪と言っても殺人とか横領なんて大きな物じゃなくて、只の空き巣だ。まぁ犯罪に大も小も無いが……。

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2

―今なら中に入っても誰も居ない

心の中でそう呟いて見知らぬ家の敷居を跨ぐ。「お邪魔します」と律儀に小声で挨拶をして靴を脱ぐ。そして一番手前の部屋に入った。
その部屋は居間らしく、液晶テレビに座り心地の良さそうなソファー、そして硝子のテーブルの上には一枚の封筒が置いてあった。
俺はその封筒に手を伸ばすと封を開けて中身を確認する。運が良かった。中には慶應義塾の創設者が五人も入っていたのだ。
俺は手に持った五万円を握り締めダッシュでその家を後にした。家に着くまでの間、一度も減速することもなく一気に走り抜けた。
まるでリレーの走者の様に手をブンブンふり、太ももが胸に着くぐらい足を上げた。手にはバトンではなくお金を握っていたのだけれど。

四畳半のお世辞にも綺麗とは言えない自室で、俺は先程盗んだ五万円をちゃぶ台に並べた。
バイトの時給が850円。俺は今、実に58時間分の給料をたった数十分で手に入れた。
しかし俺の頭の中は不安で一杯だった。自慢ではないが俺は今まで犯罪なんて犯した事はない。それこそ真面目な子供として周りからは評価されていたのだ。
ほんの少し前までは犯罪には手を染める事など考えてもいなかった。

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3

どこかで足が付いたのか、それとも通報されたのか。理由は分からなかったが、とにかく俺は逮捕された。
そして俺は三年という長い刑期を経て、執行猶予付きだがようやく釈放される事になった。
読み掛けの小説を閉じ、目の前に経っている看守にそれを差し出す。

「これ、面白いですよ。良かったら読んでみてください」

看守はひったくる様に小説を受け取ると、素早くページを何枚か捲る。そして小説を閉じて「考えておくよ」と言ってポケットの中に締まった。
俺は満面の笑顔を見せ、長い間お世話になった部屋に一礼をすると、外の世界へ足を進めた。とにかく。これで俺も自由の身だ。

「やっぱりシャバの空気は美味いぜ」

冷たい塀を出て、開口一番そんな事を言ってみる。刑務所と外の空気の違いなんて分からなかったが、よくテレビ等で訊いた覚えがあったので、前から言ってみたい言葉だった。
両手を空に向けて伸ばす。そして殆ど中身の入っていないリュックを背負うと、特に目的地も無く歩き出した。
前に住んでいたアパートはとうに契約は解除されているし、実家に帰ろうにも逮捕された時に親とは勘当しているからそれもできない。

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4

バックで駐車して在るため発進もしやすい。条件が揃った。
俺は辺りをもう一度見渡して人影が居ない事を確認して車に乗り込む。シートベルトなんかしないで急いでギアをドライブに入れる。アクセルを踏み込んで目の前の道路に飛び出した。
減速する事なく俺は車を走らせた。とにかく今はこの場を離れる事が最優先だ。俺は頭の中の地図を引っ張り出すと、隣接県までの最短ルートを確認する。そしてそこに向かう為に交差点を右折した。

ひたすら隣接県に向かって車を走らせる。ある程度コンビニから離れた所でカーラジオを入れた。途中パトカーとすれ違った時は心臓が止まるかと思う位緊張した。
カーラジオからは軽快な音楽が流れている。俺はバックミラーの位置を調節しようと手を伸ばした時に、後部座席にある物が在ることに気が付いた。
人だ。それも子供。年齢は小学校高学年位だろう。顔立ちから男の子だということが分かった。車の持ち主の子供だろうか?だとしたら非常にまずい。
不幸中の幸いで、少年はスヤスヤと寝息をたてていた。とりあえず車を路肩に停め、ハザードランプを点滅させる。カーラジオも切り余計な音を消した。俺は腕を組んで考えた。

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5

暫く、と言っても実際は一瞬の間だったろうが、俺と少年は黙ってお互いの目を見つめていた。
俺はてっきり追求されるものだと思っていたところに、いきなり謝罪の言葉である。状況が把握出来ないまま言い淀んでいると、ある不安が頭をよぎった。
俺は顔を思い切り見られている。目覚めた瞬間に逃げ出せば良かったかもしれないが、時既に遅し、の状況だった。
顔を会わしてから既に数分は経っている。いくら子供とはいえ、完全に顔を覚えられただろう。このまま逃げても捕まるのは目に見えていた。
「殺害」という考えも浮かんだが、直ぐに打ち消した。幾らなんでも人を殺めるのは出来ないし、そんな勇気もない。

―誤魔化すしかない

かなり苦しいが、相手は所詮は子供。それしか方法は無かった。上手く誤魔化せば乗り切れるかも知れないと淡い希望を抱きつつ、頭の中で文を組み立てる。

「あの…」

思案している最中、口を最初に開いたのは意外にも少年だった。不意の出来事に再び俺の思考はフリーズする。

「あの人の、お友達ですか…?」

どうやら俺をこの車の持ち主の友達だと思っているようだ。願ってもない事態に俺は何度も頷いた。

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プロフィール

キイト

Author:キイト
名前 キイト(由来は特に無いです

性別 男性

年齢 二十歳以下です

これでもある球技で全国でてます。ちなみに主将。
唯一の自慢できることでした。

好きな物はバイクやゲーム。
最近ちょっとオタクに近づいてたりします。萌えー

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