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14

再びやってきた空見子さんの病室。ノックをして扉を開くと先程と同じカーテンで囲まれた島々。ただ一つ始めに入ったときと違うのは、奥のカーテンだけが開いていて、その前に秀護が立っていると言うことだった。
時が止まっていたかのように立ち尽くしている秀護。その目線は自分の母親をじっと眺めているが、どこか遠くを見ているように見えるほど虚ろだった。
「よお」
できるだけ明るく、ファミレス以前のような口調で秀護の肩に手を置く。だが秀護は俺に目を向けるどころか一言も喋らなかった。その態度が異常に寂しく思えた。
「ちょっと空見子さんと話したい事があるから……いいか?」
俺の言葉に無言で頷く秀護。そして重い足取りで病室から出て行った。秀護と入れ替わり空見子さんと対峙する。ベッドの上の空見子さんは俺の視線を避けるように俯いていた。
「うるさくなると他の人に迷惑なんで、場所変えますか?あ、でも体調が悪いならここでも良いですよ。小声で話すんで」
少し早口で、頭を掻きながら空見子さんに提案する。
「…もともと体調が悪いから、入院してるのよ……」
ゆっくりと顔を上げ、やれやれといった感じで話す空見子さん。改めて見ると美人な方だと思う。年は俺よりも十歳位は上だと思うが、それを感じさせないくらい上品で綺麗な人だった。不謹慎だがどうして旦那は離婚などしたのだろう?少なくても容姿は文句の付けようが無いと思うんだが…
「…聞いてるの?」
「あ、はい。すいません…」
思わず見とれてしまっていたようだ。不審に思われたのか空見子さんは首を傾げていた。トリップから引き戻された俺は反射的に謝ってしまう。
「謝らなくていいわよ。…そうねそれじゃ場所を変えましょうか」
そういってゆっくりベッドから降り、スリッパを履いてよろよろと歩き出し、俺の前を通って出口に向かった。その姿は見ているだけでも辛い様に見えた。
「あの、あんまり無茶しないでくださいね」
俺の言葉に立ち止まるとゆっくりと振り返り微笑んだ。だけど本心からの笑顔では無く、作られた笑顔に見えた。
「大丈夫よ、久しぶりに立ったからこんなんだけど、すぐに慣れるわ」
そういうとまた出口へ向かって頼りない足取りで歩き出す空見子さん。俺はいつ倒れても支えれるように直ぐ横について病室を出た。


俺達はエレベーターで最上階まで登り、そこからさらに階段を登った先、つまり病院の屋上にいた。
空見子さんは大丈夫と言っていたが階段を登る足取りは重く、手すりを掴むというよりかもたれ掛かる様にして登っていた。
俺が手を貸そうとしても頑なに拒まれてしまったが、やはり個室に移るというだけ病気は進行しているのだろう。
暑い日差しに相変わらずの蝉の声が聞こえる屋上。強い風と目の前に広がる海が少しだけ涼しいと思わせてくれる。
「それで…話ってなに?」
高くそびえ立つフェンスと対峙しながら、ゆっくりとした口調で声を発す空見子さん。吹き抜ける風が肩甲骨辺りまで伸びている彼女の髪をなびかせる。
「秀護についてです」
振り向かない背中に声を投げる。しかし彼女は一度顔を向けるだけで直ぐにフェンスと向き合ってしまう。
「あの子には父親も新しい母もいるのよ。私が口出す事なんてないわ」
空見子さんは今度ははっきりとした口調で言い切る。当然、背は向けたままで。
「アイツはその父親と新しい母に受け入れられてないんですよ」
俺の言葉に彼女の肩が僅かに揺れる。
「父親には暴力を与えられ、新しい母には空気の様に扱われていた。そんなときに空見子さんの手紙を見つけたんですよ」
俺は言葉を続ける。
「唯一の希望を見つけ、ここに来た。過程はどうあれ辿り着いた。それなのにどうして受け入れてやらないんだ!」
話している途中に熱くなってしまい、声を荒げてしまう。やはり屋上に来て正確だったのかもしれない。
彼女は無言で空を仰いだ。目を細め、眩しそうに、悲しそうに空を眺めた。
「……個室に移られるそうですね」
その瞬間、空見子さんは振り返り目を見開いて俺を見た。どうして知っているの?といった表情だった。
「その意味が何だか、俺だって想像がつく。だけど、限られた時間でいいから秀護を受け入れてやってくれ」
そう言って俺は頭を下げた。これが俺の言いたいこと、お願いだった。暫くの間沈黙が流れる。蝉の鳴き声がやたら大きく聞こえた。
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15

「…貴方に、何が分かるのよ……」
沈黙を破ったのは、空見子さんの震えた声だった。俺が顔を上げると彼女の瞳には涙が溜まっていた。
「お、夫に裏切られて…秀護まで居なくなって……新しい道を踏みだそうとしたら……そ、その道でさえ、途切れた私の気持ちが………貴方に分かるっていうの!?」
その言葉と同時に隻が切れた様に両目から涙が溢れ出した。拭っても拭っても枯れることなく流れ続けていた。
いつの間にか蝉は鳴き止み、屋上には彼女の嗚咽だけが響く。
「分かるさ…俺も貴方と一緒だからな」
もちろん俺は病気でもない。きっとまだ数十年は生きることができる。しかし、未来を断たれた空見子さん。犯罪者として十字架を背負って生きる俺。
互いに普通といわれる人達からはみ出した非日常の住人。そして、秀護に仮初めの日常を求めること……それが空見子さんと俺の共通点だった。
「俺達はアイツに助けられてるんだ。空見子さんが手紙を書いてたのも、つなぎ止めたかったからなんだろ?」
「…………」
彼女は俺の言葉に俯き、体を震わせる。彼女は自分と秀護を、そして日常を手紙でつなぎ止めたかったんだと思う。
一方で諦めて、一方で希望を残していたんだと思う。それは俺と一緒だった。
「俺の名前は太宰じゃない。これは偽名だ。本当の俺は空き巣を繰り返した犯罪者。自分で道を途切れせてしまった男なんだよ」
全てを、話した。日常への疑問を感じ家を飛び出したこと、犯罪を犯し日常からの異脱をしたこと、そして秀護を通して日常をつなぎ止め様とする自分を……全て、話した。
病人と犯罪者では全然違うが、少なくとも彼女は俺と同じ様に感じた。
「結局、秀護の為と思ってしていたことは、全部自分の為だったんだよ…」


自分に言い聞かせるように、空見子さんに話した。一つ一つ自分の過去を振り返るように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
空見子さんは俺を咎めることもなく、ただ俯いたまま話を聞いてくれた。いつからか、彼女の肩の震えは止まり、すすり泣く声も止んでいた。
そんな空見子さんと入れ替わるように鳴き出した蝉。休むこともなく、愚痴も言わずにただ叫びだす。
「……一週間しか泣けないのね」
空見子さんが呟いた。俺に、というより独り言の様に喋りだした。
「蝉は…地上にでて一週間しか命がない。だから一週間しか泣けない。いや、一週間しか泣かない」
彼女はゆっくりと顔を上げ、真っ直ぐ俺を見つめる。フェンスでも、空でもなく、真っ直ぐ俺を見てくれた。
「私は…まだ地上に出ていない。例え体が半分しか出ていても、まだ残していく人達に声は届くはずよね」
俺は空見子さんの言葉にしっかりと頷いた。彼女の瞳は生気が溢れていた。力強く、真っ直ぐに俺を捕らえていた。
「自分自身の為じゃなく、あの子の為に…私はあの子の母親だもんね」
そう言って笑顔を向けてくれた。夏の日差しに照らされた顔は綺麗で、寂しさは全く感じられなかった。そしてその笑顔は改めて俺に覚悟を決めさせてくれた。
ー俺も、アイツの為に…
もう、半端な覚悟なんかじゃない。例え何があってもこの覚悟は揺るがない、崩さない。
「いい笑顔ですよ…それじゃ、俺は秀護を呼んできますから」
そう言って彼女に背を向けると病院への昇降口へと歩きだす。後ろから「ありがとう」と聞こえた気がした。

16NEW!

再びやってきた談話室。ソファーの上には放置した雑誌の姿は無く、どうやら誰かが片付けてくれたようだ。俺はキョロキョロと辺りを見渡し、秀護を探した。恐らくはここに居るのだろう、そんなに遠くに行ったとは思えない。相変わらず患者と面会者でなかなか騒がしい談話室の一角、ちょうどL字ソファーの角にアイツはいた。
「外、見てんのか?」
話しかけると黙って秀護は頷いた。その目線を追うと青い海原と水色の空が彼方で交わって広がっていた。海に浮かぶ幾つかの船舶がまるで蟻のように存在していた。ゆっくりと気ままなペースで進んでいるようにも見えた。
「もう一度、空見子さんの所へ行こう」
秀護の手を取り、引っ張り挙げるようにソファーから立たせる。そして手を握ったまま綺麗に磨かれた廊下を歩いた。歩幅が違うから当然かもしれないが、自然と俺が引っ張るような形になってしまう。でも俺には秀護が空見子さんと会うのを拒んでいるように思えた。
無言のままエレベーターに乗り、最上階のボタンを押す。ゆっくりとドアが閉まり狭い個室に二人きりになる。外部からの音が無いためより二人の沈黙が際立ってしまう。妙な浮遊感と段々と上がるフロア数を前に俺達はずっと手を繋いだままだった。
「ねぇ…」
最上階に着く直前に修吾が口を開いた。
「僕は、会いに来ちゃいけなかったのかな?」
繋いだ手から静かに伝わる振動。冷房が効いていたから暑さのせいではなくじっとりと汗が滲んでいた。最上階を示す表示と同時に鳴る合図。それからじれったく思えるくらいゆっくり開いた鉄の扉。俺は一歩を踏み出して右手に少し力を込めた。
「俺達は気付けたんだ。空見子さんをもう一度信じてくれ」
一瞬躊躇したようにエレベーターに留まった秀護だったが、頼りなく左手を握った後に、俺に続いて外に出た。今度こそは、お前を裏切る結果にはならないはずだ。俺は秀護の歩幅に合わせて、屋上へと向かった。


少し重たい鉄の扉を開いた先、天井も壁も無くなった屋上は変わらずに日差しが照りつけ、潮風が吹きつけ、蝉の合唱が響いていた。そしてまたフェンスと向き合い、先ほどの秀護の様に水平線を眺める空見子さんの姿があった。
ゆっくりと振り返り俺達の姿を確認すると、またあの笑顔を浮かべた。優しい、母親らしい笑顔。その笑顔を見た途端に、俺の右手から秀護の左手がすり抜け彼女の元へ走っていた。必死に、転びそうになりながらも、たった十メートル程の距離を一生懸命駆けていった。
伝わる温度が消えた右手。そこに風がゆっくりと入り込み、アイツの感触を奪い取ろうとする。俺は右手を握り締めそれを拒んだ。
「お母さん!」
空見子さんの胸に飛び込んだ秀護は、大声で泣いた。今まで泣きそうになったことはあった秀護だったが、今世界で一番安心できる場所で思い切り自分の感情をさらけ出していた。
母親を失った悲しみ。
父親に虐待された怒り。
新しい母に空気の様に扱われた憤り。
そして、希望にたどり着いた、喜び……
ひょっとしたら、秀護も俺や空見子さんと同じように「日常」という希望を欲していたのかもしれない。
暫く秀護は泣き続けた、空見子さんも、俺も…瞳から雫を零した。互いに、言葉は要らなかった。その涙だけで全て語れたんだと思う。
今、俺達の旅は本当に終末を迎えた。たった二日。いや時間的には二日にも満たないかも知れないほんの僅かな、些細な旅。あの時俺が盗んだ車から始まった旅は、無くしたものを取り戻し、忘れたものを思い出させてくれた。
気付かせてくれた、日常の大切さ。見せてくれた本当の覚悟、強さ。嫌いなジャガイモも食べてくれた。無邪気な笑顔を向けてくれた。笑い方も教えてくれた。そんな秀護に俺ができたことはこの旅にかけた時間よりも僅かだったと思う。
日常からはみ出した太宰。希望を辿る秀護。
二人の不思議な旅は遠回りをしながらでも、今、ようやくゴールを迎えた。

「終」

既に季節は一巡し、夏。俺は新幹線の自由席で勢いよく流れる景色を眺めながら車内アナウンスをぼんやりと聞いていた。外には緑豊かな山々と、いかにもといった青い空が広がっていた。どうやら現在は山間部を走っているようで、トンネルを潜ってはまた潜るというのを繰り返していた。その旅に買って数ヶ月の携帯が圏外になってしまうのが少々難だった。
トンネルを出てメールを受信し、潜っている途中で本文を打つ。そして再びアンテナが立つとメールを送信するというあまりタイムリーでは無い。まぁあまり重要な内容では無いので問題はないけれど、普通の送受信のスピードに慣れてしまった俺としては思わず爪を噛んでしまいそうだった。
相手は空見子さんだった。
あの一件が終わり数日後、空見子さんは嫌がる秀護を説得し、俺は父親の元まで送り届けた。予想外といったら語弊があるかもしれないが秀護の父親はあまり俺も秀護も責めなかった。恐らくは空見子さんが根回しをしてくれていたのだろう。
秀護のことが気がかりだったが、親父さんの様子を見た限りではあまり心配することでは無いように思えた。きっと父親も憎くて秀護に暴力を振るっていたわけではないのだろう。きっと空見子さんと別れて何かが変わってしまったから何だと思う。ちなみに余談だが、父親は新しい母親と別れたらしい。
誘拐犯として俺は警察に突き出されることは無かったが、俺は白のセダンごと自分で警察署へと出頭した。いわゆる自首という奴だ。そこでも意外なことに数日留置場に入れられただけで特にお咎めなしだった。執行猶予中に明らかに法を違反してしまっているのに関わらずこれでいいのか?と拍子抜けしてしまう程だった。
そして俺は実家へと戻った。長い間離れていた土地はコンビニが一件増えただけで、それ以外は何も変わっていなかった。勘当された両親と話し合い、時に父親に拳骨を浴びせられたがなんとか和解することができた。
勘当したといっても、家族が犯罪者ということだけで色々と問題があったらしい。村八分のような扱いも受けた時もあったらしい。その話を聞いたとき俺は罪悪感から涙を流してしまった。そして地元に就職し少しずつ罪滅ぼしをした。冷たい目で見てきた近所の方々も、縁を切っていたと思っていた友人達とも徐々に壁が無くなり、最近ではほとんどそういった扱いは受けなくなった。
そして冬を迎えたときに一通の手紙が俺の元へ届いた。差出人は空見子さん。以前から秀護とは電話や手紙のやり取りはしていたが空見子さんとはあの一件以来連絡は取っていなかったので、初めは目を疑った。
手紙の内容には手術が成功し、回復へと向かっている事と、あの日のお礼が綴られていた。そして幾度か文通を交わしているうちに、住所が病院から一般の元へと変わっていた。文面でも書かれていたが退院したらしい。それが今春のことだった。
どうやら旦那と復縁の話も上がっているらしく、文面からも嬉しさが伝わってきた。そして俺も純粋に祝福の言葉を書いて送った。
そして、今日。完全に復縁したらしい二人と秀護に会うために俺は一年ぶりにあの町に向かっている。今では新しい日常を送っている俺と秀護達。きっと以前の日々はもう非日常へとなってしまっているのだろう。だけどもう俺は非日常には憧れない。例え芸能界にスカウトされたり、秘密組織に勧誘されても俺は断るだろう。
その世界に行っても目新しいのは初めだけ。すぐにそれは日常となり、繰り返される日々となってしまう。だから俺は平凡と呼ばれる今の生活で十分だった。ずいぶん遠回りして気付いたことだけども、あれだけ体験して気付いたことだった。
「あれ?お前…」
不意に誰かに話しかけられた。目を向けるとそこには見知らぬ男がいた。いや、少し見覚えがある。
「俺だよ、お前の看守やってた。小説面白かったぜ」
ああ、そうかあの時の看守か。やっと記憶の隅から現れた顔と、目の前の男が一致した。しかし俺がすぐに気付かなかったのも、彼にも原因はある。黒かった髪は派手な金色となり、綺麗だった福耳にはピアスがぶら下がっていたのである。
「ああ?これ?俺仕事やめちゃったんだよね。元々コネで入ったようなもんだし」
俺の怪訝な目線に気がついたのか右の耳たぶを指差しながらへらへらと笑う。相変わらずの軽い性格だ。俺はいつぞやの様に「そうですか」と曖昧に返事を返す。
「それで、俺今旅に出てるんだ。自分を見つめなおすっていうか、振り返るというか…そう!イージーカムイージーゴウなんだよ!前にも言っただろ?簡単に手に入れたものは簡単に失う。逆に苦労して手に入れたものはちょっとやそっとじゃ無くならない!俺は今そのプロセスを作ってるんだ」
拳を握り締め熱く語る元看守。以前の俺だったらまた「そうですか」と返していたけれど…俺は黙って頷いた。
―イージーカムイージーゴウか。同感だね


「easy come easy go」完



あとがき

えーっと。一応あとがきを残そうかな、と思います。
まず初めにこの作品を読んでくださった方々。ありがとうございます。わざわざ時間を割いてまで読んでいただけて、それだけでも本当に嬉しいです。

どうでしたか、何か感じてくださいましたかね?
好きな作家さんの受け売りなんですが。この作品を読んで
「つまらない」
「意味がわからない」
「感動した」
「悲しかった」
「面白かった」
その方が感じてくれた事がこの作品の全てです。

あまり描写や、スキル云々は上手ではないですが、本人としては楽しく書かせていただきました。TOPでも書いてある通り、ただの趣味で、本当に自己満足のような作品です。

今自分で読み返してみて「初めと最後の文の書き方がなんか違うww」と自分で思ってみたり。「なんかラストシーンとか盛り上がってねえww」とか自分で突っ込んだりしてました。
暇があればきちんと推敲していきたいなぁと思ってたりします。

んで基本ハッピーエンドが好きな自分としては一番いい形で終れたかなぁと思います。
父親はまともになり、空見子さんの病気も治り、秀護に元の日常が戻り、太宰も新しい日常をスタートさせることができました。
作中では空見子さんと太宰が「俺達は何もしていない」的な考え方を持っていましたが、秀護を含めこの三人は互いにいい影響を与えていたと思います。
太宰は空見子さんを救い、空見子さんは秀護を救い、秀護は太宰を救った。もちろん秀護が空見子さんを救ったり、太宰が秀護を救ったりもしました。
結局みんな他人に気を使いすぎてたんでしょうね。

この作品を書くにあたって決めていたテーマが二つ。
タイトルにもなっている「easy come easy go」はしょって言えば「プロセスが大事」ってことですね。
そしてもうひとつが「日常と非日常」
なんかどっかのエロゲみたいなテーマですが、どちらかというとeasy come easy goよりこっちの方が強く出ていますね。
まぁこれも詳しく書かなくてもそのまんまなんで省きますww


とまぁあとがきでも収集つかないダメな子ですが、最後にまた感謝させていただきます。

要人さん。
小説を書くきっかけをくれてありがとうございます。素子や誠一などの魅力的なキャラも作れず、ヨーグルトや萌えと剣のような面白いストーリーも構成できない僕でしたが、いつもいつもコメントを残してくださって本当に励みになりました。
自分の思考を文字にするってことが改めて素晴らしいものだと実感しました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。


四葉さん。
これも要人さんがきっかけでしたが、途中からコメントを残していただいたりして、本当に嬉しかったです。キッドナップツアーの時はちょっとビックリしましたけどw。
「淡々と、それでいて力強い文章に若さを感じます」このコメントが僕の支えとなりました。本当にありがとうございます。

そして、コメントは書かれませんでしたが、見てくれた方々。本当に感謝しております。一人でも見てもらえている、そう思うだけでこの物語を綴ることができました。多謝!!



それでは、またいつか!(本編よりあとがきのほうが長いキイトでした)

プロローグ

―岐阜県関市
日本列島のほぼ中央に存在し、東海・中部地方に分類される。
面積は472.84k㎡、総人口は92,586人。
特産品としては刃物が有名で、年に一度10月に刃物祭りという祭りが催される。
自然に囲まれた土地で、清流として有名であり、柿田川、四万十川とともに日本三大清流のひとつと言われる長良川が存在する。

そんな田舎町が、私の新しく住む土地だった。

「第一章」

新幹線で名古屋まで行き、そこから乗り換えて岐阜駅まで向かう。通り過ぎる人の言葉遣いも、方言染みたものとなっていき、遠くまで来たものだと実感する。途中のホームで楽しそうに会話する数人の男女がいた。きっと旅行でここに訪れているのだろう。口調も標準語だったし、手元に持っている旅行鞄が何より「旅行で来た」というオーラを放っている。
そして私の手元にも同じように大き目のバックが握られていた。周りの人達には彼らと同じように旅行者に見えるだろう。しかし私の口から漏れるのは楽しく旅行の予定を確認する言葉ではなく、重い溜め息だった。
「こら茜、なんて顔してんのよ」
そんな私の様子に気がついたのか、隣で歩いていたお母さんが怪訝な表情で私を見つめる。私は一度母親に顔を向けると、再び溜め息をつく。
「旅行だったら、私も嬉しいのになぁ…」
口を尖らせ、拗ねた様な口調でお母さんに言い捨てる。実際、これが旅行だったら今頃はお母さんを置いてでも駅から飛び出して、すぐに辺りを散策しているだろう。だが、違うのだ。それはあくまでも「旅行」の話で、今私たちはここに「住む」為に来ている。
「しょうがないでしょう。お父さんの都合なんだから」
「転勤とは、ベタだよね」
お父さんの転勤の話が決まったのは急だった。いや、話自体はすでに決まっていたのだろうが、私の耳にそのことが入ったのは転勤する前日のころだった。当初その話を聞いたときは「サラリーマンも大変だなぁ」という能天気な考えだったのだが、それが甘かった。
転勤ともなると、お父さんは一人暮らしをすることになる。自慢ではないが私のお父さんは頭が良い。仕事もでき、会社ではそこそこの地位にいる。だけど、その反面私生活の駄目っぷりは目を瞑りたくなるようなもので、料理は勿論のこと、掃除、洗濯もロクにできない。一人暮らしなど、夢のまた夢である。
もちろんそんなお父さんのことを知り尽くしているお母さんが、そのまま「気をつけてね」と見送るだけでは済まない。これまた私の耳に入れることなく全ての事務処理を終えた。こともあろうに、高校の転校手続きも済ましていた。私の許可もなく。
私が引越しに反対するのを分かっての事だった。しかし全ては後の祭り。話を聞かされたのが二日前の木曜日、そして、先週から予定を組んでいた友達とのカラオケは、クラスメイト総出での「お別れカラオケ」となってしまったのである。
高校に入学してから数ヶ月が経ち、やっと馴れ合ってきた頃に転校である。そりゃあ、殆どが違う中学校の人間だったけど、小学校から一緒の友達もいたから悲しさは一層深かった。
「でもさ、岐阜ってどんな所なの?旅行とかでも来たことないし、観光ブックにもそんなに取り上げられてないよね」
自動改札に切符を入れながらお母さんに問いかける。岐阜と聞いても名前は知ってても特に特徴は挙げられない。
「有名なのは、白川郷かしら?それ以外はお母さんもあんまり詳しくないんだけどね」
私に次いで自動改札を潜りながらお母さんが答える。白川郷?その言葉を聞いても私はピンと来なかった。
「世界遺産に指定されてる村なのよ」
「そんな所があるんだ。行ってみたいなぁ」
「落ち着いたら、お父さんに連れていってもらおうね」
「うん!」
大きな不安と不満。それに少しだけ期待を持ちつつ、私は駅構内から出た。

―JR岐阜駅前―
初めて岐阜の土地に立った私の第一印象はあまり好くなかった。岐阜県の都心部であろう駅前。以前住んでいた土地や、名古屋駅前では聳え立っていたビルが、ここには無かった。いや、あることはあるのだが、中途半端な高さのもばかりで、人通りもさほど多くは無い。
違う意味であっけにとられている私の横で、お母さんは携帯電話で誰かと会話していた。おそらくはお父さんだろう。会話が終わり携帯電話をバックの中に入れると「あと五分位したら、お父さんが来るそうだから」と笑顔で言った。久しぶりにお父さんに会えるから嬉しいのだろう。私も実際嬉しかった。
照り付ける日差しの下、私達はすることもなくお父さんを待っていた。私は携帯を無意味に開いては閉じを繰り返していた。少ししてから私達の目の前に停まった乗用車。それに乗っていたのはお父さんだったが、見慣れない岐阜ナンバーに乗っている姿は少し面白かった。
「久しぶりだな。どうだ元気だったか?」
冷房の効いた車内に乗り込むと、開口一番お父さんがそんなことを聞いてきたので、「友達と離れ離れになるショックで、一晩中泣いた」と軽口で返してやった。転校の理由を作った、お父さんへの些細な仕返しだった。
「…悪かったな」
予想以上に落ち込んでしまったお父さん。軽い気持ちだったのだが、こうも落ち込まれると申し訳なくなってしまう。
「で、でも。それよりお父さんの体が心配だったから、ちょうどよかったわよ」
少し強引に笑顔を作り、できるだけ明るい口調でフォローを入れる。私のその言葉でお父さんの表情はみるみるうちに緩くなっていった。まったく分かりやすい人だ。
「ねえ、それより新しい家ってどうなの?確か関市っていう場所だっけ?」
今までマンション住まいだった私達だったが、これを気に一軒家を購入したらしい。それはつまりお父さんの転勤がけして短期ではないということを物語っていた。一軒家は少し憧れていた。マンションだと色々気苦労もあったし。
それに新しい町にも興味があった。駅前を見る限り都会とは言えないだろうけど、やはり新しい町にはどうしても期待をしてしまう。
「ああ、新しい家は広いし、快適だぞ。それに関市もいい所だ」
「刃物の祭りがあるんでしたっけ?」
関市、という言葉に反応してお母さんが話しに入ってきた。きっと事前に調べておいたのだろう。
「刃物の祭りって…なんか物騒だね」
刃物の祭り。効くだけでも危ない香りがプンプンしてきた。私の頭の中では出店に日本刀や包丁が並べられている映像が映し出されたが、なんともシュールな光景だった。

―県道287号車内―
広く、綺麗な川を沿う堤防を走る車。私が住んでいた町では有り得ない程の広さと澄んだ水だ。川というのは、もっと淀んでて狭いイメージがあったのだが…広い川原では家族連れや、若い人たちがバーベキューをやっていた。
名を「長良川」と言うらしい。恐らく活字上の知識だが、お父さんが詳細を教えてくれた。
清流として有名であり、柿田川、四万十川とともに日本三大清流のひとつと言わており、木曽三川の一つとしても有名で、鵜飼という行事があることも有名。
「鵜飼って?」
これまた聞き覚えの無いワードが飛び出してきた。
「船でかがり火を焚いて、その火の明るさに寄ってきた鮎を鵜っていう鳥が捕まえるんだ」
「そうなんだ、でも鳥って魚を食べちゃうんじゃないの?」
私の言葉を訊いてお父さんはハハハ、と笑った後にさらに詳しく説明してくれた。
「鵜の首には縄が巻いてあるんだ。それで、鵜が魚を捕まえた瞬間に船頭さんが縄を締めて飲み込まないようにするんだ」
「鵜飼は有名だけど…やっぱり残酷よねぇ」
私と全く同じ感想をお母さんが漏らす。刃物の祭りといい、鵜飼といいさっきからあまり良い印象がないぞ、岐阜県。
私は溜息をつき、窓の外に目を向ける。さっきまでかろうじて残っていた建物は殆ど姿を消し、今目に入るのは、山と川と民家だけ。少し期待をしていた私の理想像は脆くも崩れ去った、それもかなり派手な音をたてて。やっぱり不便より便利のほうが良い。さっき見掛けた線路は既に廃線なっているというし、若者向けのお店なんて全くといっていいほど無い。いったい服とかどこで買えばいいのよ。
車が進むにつれて田舎度が増えていっている気がする。もう十分だろうと心の中で何度も停車を願ったがそれも空しくそれから車は三十分ほど走り続けた。

―岐阜県関市―
「さぁ、着いたぞ!ここが新しい我が家だ!」
車を降りるなりハイテンションでお父さんが両手を挙げる。その前には木で建てられた一軒家、ログハウス風の洒落た造りだった。しかし、住宅地である為かかなり浮いたオーラを発している。表札に彫られた松崎という二文字が、岐阜ナンバーと同じで違和感を感じ、面白かった。
「写真では見てたけど、やっぱり実物は凄いわね」
目を細め、「新」松崎家を見上げるお母さん。というかこの二人は私の居ない所で話を進めすぎだ。もう私も高校生なんだから少しくらい意見を尊重して欲しい。
私も改めて我が家を見上げる。まだここに住むなんて実感は全然湧かなかった。まだ心の何処かで信じれなかった。少し経てば以前のマンションで毎日を過し、特にやることも無い学校で友達と話して、ろくな予定も無いのに週末を待ち望む日常が始まると思っていた。
だから、いまいち現実味が無い。急な引越しってのもあるかもしれないけど、この新しく始まるであろう日常に慣れる自信は無く、ただただ浮ついた旅行気分だった。
蝉がけたたましく鳴き叫び、いよいよ夏が本格的に始まる頃甲子園や、海開きなんかの報道が段々と近づいてきた七月のそんなある日。
私、松崎茜の…新しい日常が始まった。

第二章-1

「松崎さんって都会から来たんやおね?」
「そんなに都会ではないよ」
「どの辺に住んどんの?」
「えっと、自分でも良く分かんないや。西の方かな?」
「やっぱり喋り方が違うんやね」
「一応関東だから、標準語なんだよ」
転校初日。自己紹介を済ませた私は指定された席に着くなり、ほぼクラスメイト全員から質問攻めに合っていた。というかこの地方の方言は独特だ。いや、方言は独特なのが当たり前なのだけれども、なんだか不思議な喋り方だ。
名詞の発音は標準語、つまり東日本よりなのだが、語尾は関西弁に近くいわゆる西日本よりなのだ。日本の真ん中の県だからだろうか?ある意味中途半端な方言に思えた。
あまり馴染める気がしなかった。そりゃあまだ初日だからなんとも言えないが、新しい制服も、この方言にも、この町にも溶け込める自信が持てない。どこか客観的に自分を見てしまう。
―帰りたい…
素直にそう思う。本来なら質問攻めなんかにはあってなくて、今日の放課後の予定を話し合ったり、授業に対する愚痴を言っている筈だ。そして目的がある訳でもなく友達と街中をぶらつく。それが今までの日常だったのに。
私の苦悩なんか察してくれるわけがなく、授業開始のチャイムが鳴るまで私は聞きなれない言葉と見慣れない人たちとぎこちない会話を続けていた。
新しい学校は市立の高校で、なんでもない普通の共学の学校。家で読んだパンフレットではそこそこ歴史のある学校らしく、部活動が盛ん(あくまで盛んであって強いとは明記されていなかった)。丘の上に建っているので長い坂を超えて登校しなければならないのが苦痛だ。
教室の窓から見下ろすグラウンドはラグビーのポールだけが妙な存在感を放ち、それ以外には山しか映らない殺風景な景色。自然に恵まれているのは分かったから、もう少し快適な土地に建てかえてくれないだろうか。
履修の順番が違うのか、既に習ったことのある授業内容を聞きながらそんなことを思っていた。


授業終了のチァイムが教室に響く。長く感じた一日もようやく終わりを向かえ、私の心は少しだけ軽くなる。再び質問攻めに会う前に私は帰り支度を素早く済ませ、気配を消して教室から逃げ出す様に出た。
駐輪場までダッシュで向い、自転車に鍵を挿そうとした時、私は一人の男子生徒に目線を奪われた。特に容姿端麗とかそういう意味ではない。新しい学校では全ての生徒が何かしらの部活動に参加しなければいけないので、下校時間になって即帰宅できるのは転向して無所属の私ぐらいで、他の生徒はまだ教室やそれぞれの部室にいるはずなのである。まあ部活をサボったりほぼ活動していない部活もあるので一概には言えないが、現に駐輪場には私と彼しかいなかった。
駐輪場は学年で分けられていて、彼の立っている位置を考えるとどうやら私と同学年のようだ。
「なに?」
私の視線に気が付いたのか怪訝そうな顔をして首を傾げる男子生徒。私は黙って見つめていた事にバツが悪くなり慌てて首を左右に振り「なんでもないです!」と言って再び鍵穴に鍵を差し込もうとするが、中々入らない。焦る気持ちが余計に増幅され、なかなか差し込めない。
「あのさ…」
「はい!?」
突然話しかけられ声が裏返り、その拍子に鍵までも落としてしまう。いつの間にか私の傍に寄ってきていた彼は私の落とした鍵を拾い上げて自分の顔まで持ち上げると小さく溜め息をついて口を開いた。
「これ、自転車の鍵じゃないやろ?」
「え?…ああ!」
彼の言葉に持ち上げられた鍵をよく見るとそれは確かに自宅の鍵だった。それじゃ焦っていようがなかろうが、鍵穴に入るわけがない。指摘されたことと、目前に迫った彼の顔。二重に受けた衝撃が大きすぎて言い訳の言葉も出てこない。
「あ、ありがとう…」
必死に搾り出した声がこれだけだった。なんとなくそっけない気がするが今の私にはこれが精一杯だった。彼はそれを咎める事も、引き返すこともしないでずっとそこに立っていた。早く帰ってくれと心の中で願うがなぜか彼は動かない。
「転校生やろ?」
彼の言葉に一気に冷静さを取り戻す私。結局この人も他所から来た私に何か聞きたいのだろう。そうなる前に私は頭を下げ「ありがとうございました」とそっけない礼をして、鍵の種類を確かめながら自転車に手を伸ばした。それにしても私の存在は既に学年中に広まっているのだろうか?なんだか自分が見世物の様に感じてしまう。
「そうだよ、だから今日は早く帰らなくちゃいけないの」
確かに鍵を指摘してくれたことには感謝しているが、なぜか怒り口調で喋ってしまう。今日一日イライラが募っていたのかもしれない。鍵も開け、自転車に跨ったところで彼から思いもしなかった言葉が飛び出した。
「俺も転校して来たんやて」
「え?」
「だから、俺も転校生。先週引っ越して来たばっかりなんや」
首を傾げる私に喋ることを止めない自称転校生。
「ま、俺は県内からだけどさ。でも岐阜ってでら広いからさ、特に俺は山ばっかの所から来たもんで関市でも都会に見えてまうし」
豪快に笑いながら喋る彼。ここより山ばっかってどれだけ田舎なのか想像する事さえ難しかった。だけど同じ転校生と聞いて親近感が沸いてきて、それから他の生徒がやってくるまでお互いの事を話し続けた。
プロフィール

キイト

Author:キイト
名前 キイト(由来は特に無いです

性別 男性

年齢 二十歳以下です

これでもある球技で全国でてます。ちなみに主将。
唯一の自慢できることでした。

好きな物はバイクやゲーム。
最近ちょっとオタクに近づいてたりします。萌えー

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