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5

暫く、と言っても実際は一瞬の間だったろうが、俺と少年は黙ってお互いの目を見つめていた。
俺はてっきり追求されるものだと思っていたところに、いきなり謝罪の言葉である。状況が把握出来ないまま言い淀んでいると、ある不安が頭をよぎった。
俺は顔を思い切り見られている。目覚めた瞬間に逃げ出せば良かったかもしれないが、時既に遅し、の状況だった。
顔を会わしてから既に数分は経っている。いくら子供とはいえ、完全に顔を覚えられただろう。このまま逃げても捕まるのは目に見えていた。
「殺害」という考えも浮かんだが、直ぐに打ち消した。幾らなんでも人を殺めるのは出来ないし、そんな勇気もない。

―誤魔化すしかない

かなり苦しいが、相手は所詮は子供。それしか方法は無かった。上手く誤魔化せば乗り切れるかも知れないと淡い希望を抱きつつ、頭の中で文を組み立てる。

「あの…」

思案している最中、口を最初に開いたのは意外にも少年だった。不意の出来事に再び俺の思考はフリーズする。

「あの人の、お友達ですか…?」

どうやら俺をこの車の持ち主の友達だと思っているようだ。願ってもない事態に俺は何度も頷いた。
「そう!あいつ!友達!」

緊張の余り、片言になってしまい、コントで観るようなタイ人の様な喋り方になってしまった。
そんな俺の様子を見て、首を傾げた少年だが、直ぐに笑顔になった。子供と言うのは純粋なものだ、こんな怪しさの塊みたいな男に対しても屈託の無い笑顔を浮かべてくれる。

「次は何処に連れてってくれるの?」

少年は笑顔のまま、返答に困る質問をぶつけてきた。

―次は?何処に?

きっと旅行中だったのだろう、少年は俺の正体などもう気にしていない様子だった。それよりも次の目的地に対する興味の方が深いらしい。
当然「空き巣をしに行く」などと言える筈もない。かと言って漠然と隣の県に行く予定しかたてていなかった俺は、再び言い淀んでしまう。
というか、このまま少年を連れて車を走らすのか?それは誘拐と変わりは無い。かと言って、ここで車を乗り捨てても結果は同じだ。
再び同じ問題にぶち当たってしまった。とりあえずここで足踏みしている訳にもいかず、少年に目的地を適当に告げ、車を隣接県に向けて走らす。
国道を避け、検問が無いような道を走る。今のところ俺は誘拐犯、既に通報されているかもしれない。そう判断した結果だ。


一時間程車を走らし、県境の峠を越えて無事に隣接県に入った俺達。道中少年は学校であった出来事や、どうでもいい話を俺にふってきたが、曖昧に返事を返すだけでまともに取り合わなかった。
反応の薄い俺に少年は飽きてしまったのか、それとも疲れていたのか、峠を越える途中に再び眠りについた。まったく子供は自分勝手な生き物だ。
峠を降りると道の駅と書かれた看板が目に入り、その奥には休憩所のような施設があることに気が付いた。
俺はウインカーを点滅させると車を駐車場へと入れる。そしてエンジンをつけたままギアをパーキングに入れる。

―さて、どうするか…

殆ど勢いだけでここに来てしまった。俺一人だけなら計画通りだったのだが、予想外の同行者のお陰でいきなりつまづいてしまった。
確実にこの車の主、つまり少年の保護者は通報しているだろう。これから先検問に引っ掛かればアウト、検問どころか、うかつにパトカーともすれ違えない。
腕を組み考える。何が一番ベストな判断になるのか。とりあえずこの車はもう乗っていてはいけない。しかし乗り捨てれば行動範囲が狭くなりジリ貧になるのも容易に想像がつく。
そして何より一番の問題…俺はバックミラー越しに少年を睨みつける。当の本人は俺の心配などどこ吹く風。すやすやと平和に寝息をたてていた。
考えても答えは見つからず、堂々巡りになってしまう。俺は無意識の内に右手親指の爪を噛んでいた。苛立つとやってしまう癖だった。
爪から口を離し、辺りを見渡すと俺達以外にも沢山の車が見え、休憩所も賑わっていた。休日のせいなのか、家族連れやカップルなど様々な人間がいたが、皆共通して笑顔だった。
そんな中唯一浮かない表情の俺。いまだに答えは見付からない。することもなく俺はカーラジオのスイッチを入れると、そこから軽快なメロディが流れる。
急に流れた音楽で目が覚めたのか少年はゴソゴソと体を揺らし、ゆっくりと体を起こした。

「……おはようございます…」

まだ意識がはっきりしていないのか、頭を小刻みに揺らしながら目を擦った。俺は見向きもせずに「おう」とだけ返してカーナビに手を伸ばした。
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プロフィール

キイト

Author:キイト
名前 キイト(由来は特に無いです

性別 男性

年齢 二十歳以下です

これでもある球技で全国でてます。ちなみに主将。
唯一の自慢できることでした。

好きな物はバイクやゲーム。
最近ちょっとオタクに近づいてたりします。萌えー

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