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「なぁ、お前ってさ…」
俺の言葉に秀護は顔を上げ、こちらを見つめる。その瞳にさっきまでの無邪気さは無く、逆に酷く哀しげだった。
「夏休みは…普通友達と遊ぶもんじゃないのか?」
確かに家族旅行もするだろうが、コイツの場合は異質だった。冷静に考えると「ん?」と首を傾げる事が幾つかあった。
俺の質問に対して、秀護は一向に答える素振りをみせることなく再び俯いてしまった。きっと俺の言った言葉が図星だったのだろう。
「んじゃ、質問変えるぞ」
黙ったまま頷く秀護。俺はひとまず路肩に車を寄せて、停車する。
「この車の持ち主との関係は?」
これが、俺が抱いた違和感の正体だ。俺がこの車のオーナーと友人という、かなり無理のある言い訳をする前、そう秀護が言った言葉だ。
―あの人の、お友達ですか?
「あの人」と言う単語。小学生位の子供なら、少しでも面識をもったら馴れ馴れしく名前で呼ぶだろう。現に秀護は俺の事を「太宰さん」と呼んでいる。
親ではないにしろ、一緒に旅行する位仲のいい間柄なら「あの人」と表現するのは不適切だ。
「…お兄ちゃん……」
「それじゃあ名前を言ってくれ」
三万円を手に入れた時に見つけた自賠責の紙を眺めながら秀護に言葉をぶつける。こんな事ししなくても、もう答えは分かっているが念のためだ。
「え、えと……」
言いよどむ秀護。うっすらと瞳に涙を浮かべ今にも声を張り上げ泣きそうだった。
「はい、時間切れー」
俺はそう言うと、クイズの答えを後部座席に投げ捨て車を発進させる。俺は運転しながらナビを触り、高速道路を使うルートに設定を変えた。
報道されない誘拐。オーナーと関係が不透明な秀護。これだけの事があり判断した。恐らくは警察には捕まらないだろう。
俺は窓を開けて車を走らせる。信号に引っかかり停車する度に車内に入り込む熱い日差しと蝉の声。何故か心地良く感じてしまう。
最短距離を伝えるカーナビ、どうやら目的地に着くのは夜になるらしい。上等だ、例え何時間かかっても俺は苛立たないだろう。今は最高の気分なのだから。

秀護は俺に言及されてから元気が無くなってしまい、俺から話しかけても反応は薄かった。
「ほら、腹減っただろ」
しばらく高速を走り、俺達はインターで休憩をとっていた。日も沈みかけて、空は茜に染まり始めていた。
外にあるベンチ、そこからは山と田畑しか見えないが夕焼けの空と相まって、とても落ち着いた気分にさせてくれた。
俺は売店で買ったお握りを渡すと、すでにベンチに座っていた秀護の隣に腰掛けた。
秀護は遠慮がちにお握りを受け取ると「ありがとう」と呟き、ビニールの袋を破く。そして口に運ぶとまた「おいしい」と遠慮がちに呟いた。
俺も袋を破くと口に入れる。出所してから何も食べてないせいか、それともこの景色がそう思わせてくれるのか…120円のどこにでもあるお握りが美味しく感じた。
「お、美味いな。さすが俺のチョイス」
嘘臭い笑みを浮かべながら秀護に話し掛けるが、相変わらず反応は薄い。問い詰めて以来なぜか俺から話し掛ける事が多くなっていた。
それは、今の気分がいいからだろう。コイツが家出少年だったり、既に誘拐されていたのかは分からないが、社会的にみたら秀護は今の俺と同じ状態なのだ。
日常からはみ出した存在。守るべきルールから抜け出した存在。俺はひょっとすると、仲間ができて喜んでいるのかもしれない。
「ねぇ…」
久し振りに秀護から口を開いた。俺は「なんだ?」と秀護に顔を向け見つめる。
「梅干し…嫌い」
そう言って秀護が目線を落とした先には、両手に握られたお握りの赤く染まった場所が有った。
「お前なぁ…お握りと言えば梅干しだろ?好き嫌い言うなよ。ろくな大人になれねぇぞ」
ため息混じりに言い放つ。そう言っても秀護の手は止まったままだった。俺はそんな秀護の姿を見て再びため息を吐くと、手を差し出した。
「食ってやるよ。但し、次からは絶対食べろよ」
俺の目と自分のお握りを交互に見た後に遠慮がちではなく無邪気な笑顔を見せてくれた。
「ありがと、太宰さん!」
「…それで、良いんだよそれで。ガキはガキらしく笑ってろ」
俺はそう言うと秀護の頭を乱暴に撫でた。髪の毛が乱れ、口では文句を言っているが、秀護は笑顔のままだった。
「よし、それじゃあ行くか」
「うん!」
食事も終わり、立ち上がって車に向かう。油蝉の声は消え、変わりにひぐらしの鳴声を背中で聞きながら、俺達は車に乗り込んだ。
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だんだんと物語が進んできましたね。続きが楽しみになってきました♪
プロフィール

キイト

Author:キイト
名前 キイト(由来は特に無いです

性別 男性

年齢 二十歳以下です

これでもある球技で全国でてます。ちなみに主将。
唯一の自慢できることでした。

好きな物はバイクやゲーム。
最近ちょっとオタクに近づいてたりします。萌えー

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