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8

インターから再び車を走らせて既に二時間は経っていた。秀護は話疲れたのか瞼を閉じ寝息をたてている。
眠るまで俺達はどうでもいいことを話し続けた。俺の事が知りたいと言われた時は焦ったが、適当な設定をつけて返しておいた。勿論、今まで塀の向こうにいたとは言ってない。
ここまで走るとちらほらと目的地の地名が書かれた標識が見え始めていた。既に日は沈み、車のヘッドライトを点けて運転していた。
―そういや、なんでコイツはこんな所に行きたがったんだ?
秀護が示した目的地。あと一時間程で到着する所までやってきたが、本人の口からは未だに理由を聞いていない。
特に観光地でもない地域で、子供が好き好んで行くような場所ではない筈だった。いや、大人でも旅行先にする人は少ないだろう。
ではどうして?考えても考えても答えは出てこない。そう言えばコイツの事は何も知らない。
話すことと言えば学校の友達の事や、好きなテレビ番組の事だけ。家族や自分の事は一切口にしていなかった。
「起きたら聞いてみるか…」
色々俺の中で考えてはいるが、それは全て推測でしかなかった。何一つ本人には確認を取れていない。
そんな事を思っていると、ガソリンが残り僅かしか無いことに気が付いた。俺は給油するために差し掛かったインターに向かってハンドルを切った。


「いらっしゃいませー」
ガソリンスタンドに車を入れると、営業スマイルを浮かべながら大声を張り上げるバイトらしき店員。
その声に反応して山びこの様に他の店員も声を出す。
「レギュラー満タンで」
窓を開けて店員に伝える。そしてエンジンをきるとポケットからクシャクシャになった札を取り出す。
次第にガソリンの匂いが車内に立ち込める。この独特な匂いが俺は好きだった。
窓も拭き終わり、どうやら給油も終わったらしく、笑顔を浮かべながら店員が窓から話しかけてきた。
「失礼します。お会計は…」
俺は店員の言葉に耳を疑った。お金が足りない訳ではないが、その金額は明らかに俺が今まで知っている金額より遥かに高かった。
俺はお札を渡し、エンジンをかける。そして料金表を見ると、以前よりリッター数十円高くなっていた。
そう言えばカーラジオが暫定税率がどうとか言っていた気がする。やはり三年もの時間を刑務所で過ごすと色々なギャップを感じる。
「ありがとうございましたー」
店員達に見送られ、再び車を走らせる。思ったより少なくなった所持金。念には念を入れて、俺は高速から降りることにした。
ナビの指している距離はそう遠くないし、別に急ぐ理由もない。既に目標県内には入っているから、一般道でも二時間程で到着するだろう。
下道の道路沿いの民家や店舗の明かりがちらほらと見え、街灯の光が道を照らしている。時折通り過ぎるコンビニの明かりがやたら眩しく思えた。
十分程で民家も店舗も消え、辺りは田畑と山に囲まれた。先程までは頻繁にいた対向車も全く来なくなり、街灯もない道を俺の車のヘッドライトだけが照らしていた。
やがて峠のような道に入る。坂を登ったかと思えば下り、また登る。その繰り返しを何度かして、峠を抜けた時…目の前から山が消えた。
「…海、か」
防波堤越しに見える海岸。灯りなんか無くても海だということが分かった。俺は駐車できるスペースを探した。
窓を開けて、エンジンをきる。俺は波の音をBGMに瞼を綴じた。
ーこれからどうするか…
目的地には辿り着いた。秀護の望みを叶えた今、俺も次の行動を開始しなければならない。
とにかく、秀護とはもう一緒にはいられない。足手まといになるし、なにより共犯にするつもりはなかった。
秀護は今被害者である。なんとでも理由は付けられる。こんな子供に、俺の様に堕ちていってほしくない。
所詮、俺は犯罪者。普通の生活にはもう戻れない。罪の意識は消え、夢も希望も無く、誰とも関わらずまた罪を重ねるだけの日々…
それは、既に死んでいるのと同じだろう。だけど俺はそれで構わない。初めから何か夢が有ったわけでもなく生きていたのだから…
繰り返す波の音と、微かに聞こえる虫達の合唱。俺は目を開けると秀護の肩を揺らした。
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そろそろ目的地ですな♪
プロフィール

キイト

Author:キイト
名前 キイト(由来は特に無いです

性別 男性

年齢 二十歳以下です

これでもある球技で全国でてます。ちなみに主将。
唯一の自慢できることでした。

好きな物はバイクやゲーム。
最近ちょっとオタクに近づいてたりします。萌えー

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