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14

再びやってきた空見子さんの病室。ノックをして扉を開くと先程と同じカーテンで囲まれた島々。ただ一つ始めに入ったときと違うのは、奥のカーテンだけが開いていて、その前に秀護が立っていると言うことだった。
時が止まっていたかのように立ち尽くしている秀護。その目線は自分の母親をじっと眺めているが、どこか遠くを見ているように見えるほど虚ろだった。
「よお」
できるだけ明るく、ファミレス以前のような口調で秀護の肩に手を置く。だが秀護は俺に目を向けるどころか一言も喋らなかった。その態度が異常に寂しく思えた。
「ちょっと空見子さんと話したい事があるから……いいか?」
俺の言葉に無言で頷く秀護。そして重い足取りで病室から出て行った。秀護と入れ替わり空見子さんと対峙する。ベッドの上の空見子さんは俺の視線を避けるように俯いていた。
「うるさくなると他の人に迷惑なんで、場所変えますか?あ、でも体調が悪いならここでも良いですよ。小声で話すんで」
少し早口で、頭を掻きながら空見子さんに提案する。
「…もともと体調が悪いから、入院してるのよ……」
ゆっくりと顔を上げ、やれやれといった感じで話す空見子さん。改めて見ると美人な方だと思う。年は俺よりも十歳位は上だと思うが、それを感じさせないくらい上品で綺麗な人だった。不謹慎だがどうして旦那は離婚などしたのだろう?少なくても容姿は文句の付けようが無いと思うんだが…
「…聞いてるの?」
「あ、はい。すいません…」
思わず見とれてしまっていたようだ。不審に思われたのか空見子さんは首を傾げていた。トリップから引き戻された俺は反射的に謝ってしまう。
「謝らなくていいわよ。…そうねそれじゃ場所を変えましょうか」
そういってゆっくりベッドから降り、スリッパを履いてよろよろと歩き出し、俺の前を通って出口に向かった。その姿は見ているだけでも辛い様に見えた。
「あの、あんまり無茶しないでくださいね」
俺の言葉に立ち止まるとゆっくりと振り返り微笑んだ。だけど本心からの笑顔では無く、作られた笑顔に見えた。
「大丈夫よ、久しぶりに立ったからこんなんだけど、すぐに慣れるわ」
そういうとまた出口へ向かって頼りない足取りで歩き出す空見子さん。俺はいつ倒れても支えれるように直ぐ横について病室を出た。


俺達はエレベーターで最上階まで登り、そこからさらに階段を登った先、つまり病院の屋上にいた。
空見子さんは大丈夫と言っていたが階段を登る足取りは重く、手すりを掴むというよりかもたれ掛かる様にして登っていた。
俺が手を貸そうとしても頑なに拒まれてしまったが、やはり個室に移るというだけ病気は進行しているのだろう。
暑い日差しに相変わらずの蝉の声が聞こえる屋上。強い風と目の前に広がる海が少しだけ涼しいと思わせてくれる。
「それで…話ってなに?」
高くそびえ立つフェンスと対峙しながら、ゆっくりとした口調で声を発す空見子さん。吹き抜ける風が肩甲骨辺りまで伸びている彼女の髪をなびかせる。
「秀護についてです」
振り向かない背中に声を投げる。しかし彼女は一度顔を向けるだけで直ぐにフェンスと向き合ってしまう。
「あの子には父親も新しい母もいるのよ。私が口出す事なんてないわ」
空見子さんは今度ははっきりとした口調で言い切る。当然、背は向けたままで。
「アイツはその父親と新しい母に受け入れられてないんですよ」
俺の言葉に彼女の肩が僅かに揺れる。
「父親には暴力を与えられ、新しい母には空気の様に扱われていた。そんなときに空見子さんの手紙を見つけたんですよ」
俺は言葉を続ける。
「唯一の希望を見つけ、ここに来た。過程はどうあれ辿り着いた。それなのにどうして受け入れてやらないんだ!」
話している途中に熱くなってしまい、声を荒げてしまう。やはり屋上に来て正確だったのかもしれない。
彼女は無言で空を仰いだ。目を細め、眩しそうに、悲しそうに空を眺めた。
「……個室に移られるそうですね」
その瞬間、空見子さんは振り返り目を見開いて俺を見た。どうして知っているの?といった表情だった。
「その意味が何だか、俺だって想像がつく。だけど、限られた時間でいいから秀護を受け入れてやってくれ」
そう言って俺は頭を下げた。これが俺の言いたいこと、お願いだった。暫くの間沈黙が流れる。蝉の鳴き声がやたら大きく聞こえた。
プロフィール

キイト

Author:キイト
名前 キイト(由来は特に無いです

性別 男性

年齢 二十歳以下です

これでもある球技で全国でてます。ちなみに主将。
唯一の自慢できることでした。

好きな物はバイクやゲーム。
最近ちょっとオタクに近づいてたりします。萌えー

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